IT業界の様々な商売の仕方についてのメモ

モノまたはコトを売るのはIT業界でも同じ。でもIT業界ならではの様々な形態が存在する。

汎用製品の販売

最初になんらかの汎用製品を開発し、それを売って対価を貰うスタイル。料金の徴収スタイルによっても若干の違いがある。

  1. 一括で対価を貰う(パッケージビジネス)
  2. 利用した時間に応じて対価をもらう(従量課金やサブスクリプション

だがいずれも製品が完成するまでのコストが大きく、しかも完成するまで1円にもならないためハイリスク(=完成するまでのコストが大きい)である、という点は同じ。ただし大量販売できれば、複製コストが極めて安いことから大きな利益が期待できる。

ということから集客が大変重要となる。つまり営業費・宣伝広告費も相当なものになる。それがないなら、その溝を埋める何かがいる。営業費も宣伝広告費も埋め合わせる何かもないなら、莫大なコストをかけて売上ゼロでも不思議はない。

総じて、基本的にハイリスクハイリターンな重厚長大型と考えるべきスタイルである。中には集客をある程度小売店が担ってくれる電子書籍のようなものもあるが、例外と考えたほうが良い。

受注生産

エンドユーザーから実現したいことを聞き、それを実現するためのモノを提案し、そして開発するスタイル。いわゆる受託開発。昔は請負契約によるものが主流だったと聞くが、昨今ではアジャイル式の準委任契約もなくはないと聞く。

汎用製品と違って売上は固定的。ただし受注さえしてしまえば、その後で莫大な集客コストをかけなくてもキッチリ売り上げが立つと期待できる。その意味で、小資本でも比較的楽に(製品販売と比べればまだまし、という意味で)商売を回せる余地がある。

ただし、作れない・作ったけど払ってくれない・不具合に対して法外な損害賠償をされる、といったトラブルのリスクをちゃんと管理できる必要がある。IT業界の受注生産は不採算案件の多さが昔から問題となっており、このリスクをいかに管理するかが重要なポイントとなる。

技術力不足で作れないリスクは、受けられるか受けられないかの予想はそれなりにつくはずだから、まだ管理できる。というか、それが全くできないなら受注生産などしてはいけない。

管理が困難なのは、エンドユーザーの非協力と無責任である。すべてのエンドユーザーがシステム開発に対する熱意(と能力)に溢れていればどんなにか素晴らしいことだろうと思うが、残念ながら現実はそうでない。なにが必要なのか自分でもわかっていないし、自分で決めたことに責任を持とうともしない、なんて恐ろしいエンドユーザーも中にはいる。そんな相手から受注してしまうと悲劇である。異様な案件に飛びついてしまわないのはもちろんだが、不幸にも後からそんな担当者に変わってしまうこともあるので、すべての卵を一つのバスケットに入れない工夫も必要となる。

また、システム開発は不具合ゼロがあり得ない――これは裁判でも認められている当然の前提である――ことから、不具合のリスクにも対応しなければいけない。これは過大な責任を負わないよう契約内容を管理するだけでは足らず、賠償責任保険の利用も合わせて行うべきである。

総じてミドルリスク・ミドルリターンと言ったところであろうが、ただし付き合う客層による。また自分の手に余る案件を引き受けると惨事を招くため、過大なリスクテイクは禁物である。

雇われて工賃を貰う

月いくら、あるいは時間いくらで働いてお金をもらうスタイル。

  1. インソーシング(いわゆる従業員雇用)
  2. アウトソーシング先となる(いわゆるSESや派遣)

リスクが低い傾向があり、またスキルが低くとも――褒められたことではないが――お金は貰えるという点で安定してはいる。コストも通常は雇用主持ちである。

ただしその安定性はマイナス方面にも作用することは忘れるべきでない。どんなに効率よく仕事を済ませても、大きな功績を挙げたとしても、収入は変わらないか微増にとどまる。夢や希望を掴める人生とは、ごく稀にある大きなチャンスを掴んだ人生のことだが、このスタイルでそのようなチャンスを掴む機会は皆無と考えてよい。ベンチャー企業ストックオプションのような例外も稀にあるが、これとてそんな好条件はそうないし、あったとしても実現するとは限らない。

という理由により、他のスタイルの上位互換ではない。ローリスク・ローリターンくらいか。だが昨今の社会事情を考えるとこのスタイルもローリスクとはいいがたくなってきており、実のところミドルリスク・ローリターンくらいのポジションかもしれない。

広告収入

直接ユーザーから対価を徴収するのではなく、広告を表示してそこから売上を立てるスタイル。ソーシャルメディア(e.g. Youtube, ブログ, etc, etc...)やサービス(e.g. ジモティ)の運営がユーザーに提供する価値となる。

問題はマネタイズのレートがあまり高くないということ。またサービスを作って広告を出す場合、汎用製品のスタイルと同じく重厚長大のケがある。

強いて言えばハイリスクからミドルリスク・ローリターンくらいか。だが水物すぎて売上をアテにし難く、よほど魅力的なコンテンツを持っていないと収入の柱とするのは困難なように思われる。

参考