この本を読んだ。自分もこの先どう生き残るのかを考えなければいけない年である。あと20年あると仮定して、ではどうする、ということを考えてみたい。
5年後、10年後、そして20年後、日本はどうなっているのか?
5年後
良いほう
DXに代表される知識経済化が進む。リソースの浪費を避け、本当に必要なものだけを必要なだけ利用する賢明な社会への移行が行われる。情報技術の重要性は高まりこそすれ低くなることはない。
世界的な自由貿易体制もまだ残っている。
悪いほう
おそらくリセッションの最中か、抜け出したばかりで世界中が疲れきっているか、だろう。仕事はとても少なくなり、ほとんどの事業体で売上が大きく減る。また、あまりの規模の大きさに社会保険を正常に回せず、さりとて潰すわけにもいかずで、シワ寄せが直接税・間接税・またはインフレタックス・日銀にいく。たぶん日銀に行く。だがこれにより、日銀がイギリスで起きたようにマーケットの謀反にあい(主従関係がないのだから本来おかしな表現だが)、本能寺ばりに炎上するかもしれない。
また個人としては、このとき45才を超えていることから、年齢的にもフリーランス的な業務委託としての仕事を出してくれる先は相当に減っていると思わねばならない。
ではどうする
家計のコスト削減に務めるのはもちろん、貯金もヘッジしておく。仕事はあるだけマシの域になると思われるから、もちろん悪事をしてはいけないが、基本的にえり好みできないと考えるべき。売上が大幅に下方修正を余儀なくされる可能性が高いことから、現時点(2022年)で大きな投資を行うことは――自分の会社で正社員を登用することも含め――慎重にも慎重を重ねる必要がある。
10年後
良いほう
景気が戻ってくる。クラウドは使って当たり前のものとなり、むしろAIやIoTがどんどん実用の域に達して、ユビキタス社会の実現に近づく。ただしこの時点では、まだAIやIoTに人が合わせる形だろうから、職人芸的なテクニックの生き残る余地は残る。
悪いほう
米中欧の3ブロック化が進む。おそらく日本は米ブロックの中かすみっこ。
少子高齢化がさらに深刻に。生産と消費は2022年よりもグッと落ち込む。日本はリソースを総花的に回すことが不可能になっており、かつての大恐慌後のように統制経済化が進む。国策に合致しない中小零細の多くが厳しい立場に置かれ、次々に整理される。
また個人としては、このとき50才を超えている。エンジニアを続けられているかも怪しいが、続けられているとしても最前線を張れるかは微妙なところ。
ではどうする
国内の仕事が生き残っていればいいが、悪い予測の通り、あっても官業のN次受けがほとんどになると相当に厳しい。官業は大企業の独壇場となるだろうから、中小零細はおこぼれにあずかれたとしても過酷な立場に置かれる。
してみると、質素倹約に務めつつも、海外から仕事をもらえるよう活路を探るべきか。おそらく日本は米ブロックだろうから、英語必須。技術動向もキャッチアップしておくべきなのは言うまでもない。
20年後
さらに少子高齢化が深刻となり、極点に達する。それはつまり、その頃には改善の兆しが見えるはずということであり、一方でこの時が最悪に状況が悪いということでもある。
良いほう
AIやIoTはさらに進化して、最早2022年からは考えられないほどの域に。すでに大半の業務で人よりAIのほうが優秀になることから、AIが手を出しづらい分野、たとえば意思を持って未来絵図を描く能力や自発的に動く能力が人間の生き残れる立ち位置になる。AIやIoTなどの新技術をビジネスにつなげられた人間は大きな富を築くかもしれない。
悪いほう
人が活躍できる場はいよいよ狭まる。
コミュニケーションが人の生き残る道という説もどうであろうか。それそのものは成果ではない。成果ではないものにお金を払うビジネスが未来の主流となるだろうか。またコミュニケーションが重視される分野でも、会話機能がついたロボットのほうが好まれるケースは多いであろう。自分は保育・医療・介護・教育の分野が例として思いつくが、これらでさえ人間ならではの問題がしばしば起きており、全て入れ替えるとまではいかずとも、細かく分析すれば対人ロボットやセンサーに任せたほうが適切なタスクが多そうに思われる。
また個人としては、このとき60才。知能・肉体ともに衰えており、簡単な仕事をできれば御の字といったところか。
ではどうする
どないしょ。
というのは冗談だが、ここまで先の話となると予測すら難しい。2022年時点では、自分を磨きつつ健康に気を付ける、程度のことしか言えない(書けない)。
その他思ったこと: GDPは参考までに留めるべき
これはこの本を読んで思ったことだが、豊かさを考えるにあたってGDPをKPIとして用いるのはいかがなものかと思う。GDPはわずか1年の間にどの程度物量を動かせるのかという指標にすぎない。これを目標値にしたら無理な浪費で潰れてしまう。
算定基準も豊かさを考えるには微妙だ。素晴らしいサービスを廉価で提供して利便性を向上させるよりも、莫大なコストをかけて巨大な穴を掘って埋め戻す壮大な無駄のほうが、人々を豊かにしたと評価されてしまう。こんな馬鹿な話はない。それが仕事を増やすのだとする論もあるかもしれないが、ブルシット・ジョブを増やしてどうするのか。